まささん、映画「五つの銅貨」を語る

ミュージカル映画・音楽映画の歴史
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ミュージカル映画・音楽映画の歴史33(私の映画体験111)

五つの銅貨(The Five Pennies)を

 今回は、1959年制作、メルヴィル・シェイヴィルスン監督の「五つの銅貨」です。1920年代に活躍した、実在のジャズミュージシャン、レッド・ニコルズの伝記映画です。

 この映画は、前にご紹介した「オリバー」と同じく、中学校の郊外学習で観に行きました。中学校一年生の時です。

 初めてジャズと言うものに触れてそれまでフォークソングしか聞いていなかった私は、大変感動したのを憶えています。映画の楽しさ、ジャズの素晴らしさを教えてくれた、私にって貴重な映画です。もし私にとってお気に入りの映画10本を選べとなった時、必ず入ってくる映画です。

あらすじ

 コルネット(トランペットより一回り小さい管楽器)の奏者、レッド・ニコルズ(ダニー・ケイ)は、一旗揚げようとニューヨークへやってきます。その腕前を見込まれ、楽団にみごと合格します。

 ある夜、楽団仲間からコーラスガールのボビーを紹介されます。ボビーとのデートにあるナイトクラブに行った時、レッドは大変酔っぱらってしまい、演奏中のステージに上がてしまいます。ステージではルイ・アームストロングとその楽団が演奏していました。レッドはそこですばらしい演奏をして、ルイに認められます。

 レッドとボビーは結婚します。その後、いくつかの楽団に所属した後、レッドは、「ファイブ・ぺニーズ」という自分の楽団を立ち上げます。その楽団には、若き日のジミー・ドーシーやベニー・グッドマン、グレン・ミラーなどが参加しました。楽団は、大評判となり、各地で演奏活動が始まります。

 そうするうちレッドとボビーの間には、女の子が生まれます。彼女はドロシー(幼年期はスーザン・ゴードン、少女期はチュ―べディ・ヴェルド)と名付けられました。レッドの楽団は、その後もますます人気が高まり、アメリカ各地を飛び回ります。何年かして、ドロシーもいよいよ学校に行く年頃になります。

 まえまえから夜のナイトクラブのお酒やたばこにまみれた環境がドロシーによくないと思っていたボビーは、ドロシーを寄宿学校に入れようとレッドに相談します。気の進まないレッドでしたが、しぶしぶ了解します。寄宿学校に入ったドロシー、でもレッドもボビーも忙しくて面会に行けません。

 あるクリスマスの夜、雨の中ブランコに乗りながらドロシーは、両親が来るのを待っていました。そして、とうとう高熱を出し、小児麻痺にかかってしまいました。大いに反省したレッドは、今までの生活を改め家族と一緒に落ち着いた生活をしようと音楽を捨てる決心をし、コルネットを川に投げ捨てます。

 何年か経ちました。ロサンゼルスの造船所でレッドは働いています。家族も一緒です。その年のドロシーのお誕生日パーティにドロシーの友達も多く集まりました。彼らはその場でグレン・ミラーなどのジャズバンドのレコードをかけます。レッドは思わず、今演奏している彼らは、昔私のバンドで演奏していたと口を滑らします。ボビーもどこからかコルネットを取り出してきます。レッドはコルネットを吹こうとしますが、もはや唇が固まってしまい、うまく吹けません。ドロシーの友人たちの失笑を受け、パーティーは終わりました。

 そんなことがあり、ドロシーは、幼かった昔のことを徐々に思い出してきました。自分の為に父が音楽を捨てたことも。ドロシーは父にもう一度音楽をやり直すよう強く勧めます。最初は嫌がっていたレッドでしたが、ドロシーの叱咤激励にやり直してみる決意をします。そこから復帰に向ての猛練習が始まります。

 復帰の場所は、場末のナイトクラブ。観客もまばら。「俺はもう忘れられた人間なんだ。」とつぶやきながら、演奏に入ろうとステージに上がると、店の外からにぎやかな声がします。「兄弟、どこに行ってたんだ。」と言いながらドアが開いて入ってきたのは、ルイ・アームストロング。そのほかグレン・ミラーたち昔の仲間や観客たちが大勢店に入ってきます。そしてサプライズがもう一つ。なんとドロシーが杖の助けを借りずに、レッドのほうに歩いてきます。彼女もレッドの猛練習に負けじと歩けるようになる練習をしていたのでした。二重の喜びに包まれて、レッドはルイ達と共ににぎやかなセッションを始めるのでした。

名曲の数々

 またまた使い古しのフレーズを使いますが、本当に名曲の数々が流れます。まずは”ラグタイムの子守歌”。私の大好きな曲です。もし私の知っている曲で好きな曲ベスト5を選ぶとしたら必ず入ってくるでしょう。それぐらい好きな曲です。

 そして”ぐっすりお休み”。主題歌の”5つの銅貨”。レッドとボビー、ドロシーの三人がヂュエットする”子守歌メドレー。みんな素敵な曲です。かれこれ半世紀ぐらい前、毎夜のようにこの「5つの銅貨」のレコードを聴きながら眠っていたのを懐かしく思い出します。

 ルイ・アームストロングとダニーケイの掛け合いで歌われるジャズのメドレー。ダニーケイがルイ・アームストロングの物真似をしながら歌う”聖者の行進”もまた楽しい。ラジオの放送で”インディアナ”の曲をダニーケイがハワイアン風、ロシア民謡風に演奏するのもいいですね。とにかく私のお気に入りの曲ばかりです。

ダニーケイという役者

 彼の出演していた映画は、前にご紹介した「ヒット・パレード」(48年)や「アンデルセン物語」(52年)「ホワイト・クリスマス」(54年)とこの「五つの銅貨」ぐらいしか見てないので(出世作の「虹を掴む男」(47年)は残念ながら見ていません。)偉そうなことは言えないかもしれませんが、でも歌って、踊れて、コメディもできるこの役者が私は大好きです。

 そのコメディも癖がなく、素直に笑わしてくれるおおらかさがいいですね。この1950年代に活躍した役者を見ているとまさに第二次世界大戦後、世界の覇者として君臨したアメリカ合衆国のユーモアとおおらかさを体現していると感じるのは私だけでしょうか。とにかく、ひとつの時代を作った役者であることは間違いないように思います。

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